にしん御殿 小樽貴賓館(旧青山別邸)についてご紹介
昭和の初期まで、小樽はニシン漁で栄えていました。
市内に残る歴史的建造物は、このニシン漁に由来するものがたくさんあるのですが、その中から人気漫画「ゴールデンカムイ」にも登場する「にしん御殿 小樽貴賓館(旧青山別邸)」をご紹介します。
◆ 旧青山別邸(国の登録有形文化財)
大正時代に青山家が建てた豪華絢爛な別荘。建坪約190坪の木造2階建てで、東京都内の有名デパートが約50万円で建築できた時代に、30万円以上もの大金と6年半もの歳月を費やし、総勢50人以上の職人が技を競って建てました。
当時日本一の大地主と呼ばれていた山形・酒田の本間邸の豪華さに触発され、それを上回るものを建てたいとの情熱で、その時代の美術と建築技術の粋を集め、建材から装飾に至るまでこだわり抜き、贅を尽くした建物。欄間や軒下に施された彫刻や狩野派の流れを汲んだ絵師たちが描いた襖絵も見事で、まさに「北の美術豪邸」と呼ばれるにふさわしい建築物です。
旧青山別邸は、2010年(平成22年)に国の登録有形文化財となりました。ちなみに、旧青山家の本邸は山形県遊佐町にあり、そちらも国指定の重要文化財となっています。
◆ 小樽貴賓館
敷地の入り口には樹齢100年以上と言われる赤松の木があります。
全体で約1,500坪あり、旧青山別邸の周りには、坪庭、枯山水の庭園、アジサイの庭、シャクナゲの庭など、それぞれの方向に趣の異なる素晴らしい庭があり、四季折々の彩りが楽しめます。
また、「ゴメが鳴くから、ニシンが来ると~」の歌い出しで有名な「石狩挽歌(作詩家:なかにし礼氏、作曲家:浜圭介氏、歌:北原ミレイ氏)」ゆかりの地として、記念碑となかにし礼さん直筆の歌碑もあります。
貴賓館の建物に入ると、北海道ゆかりの日本画家による豪華な天井画が迎えてくれます。広間や和室・洋室があり、庭園を眺めながらニシンを使ったお重やお蕎麦などが楽しめます。
◆ 鰊御殿
もともとは青森出身の田中福松によって、明治30年(1897年)に積丹半島の南側の付け根にある泊村に建てられたもので、建設には7年もの歳月を費やしています。
北海道や東北地方の木材を使って建てられており、番屋として全盛期には120人もの漁夫が寝泊まりしていたそうです。
昭和33年(1958年)に現在の場所に移設復元されました。その後、小樽市に寄贈され、昭和35(1960)年に、北海道の民家では初めて「北海道有形文化財鰊漁場建築」に指定されています。
総面積は約185坪もあり、現存する鰊御殿としては最大級。一部2階建てで、1階にはにしん漁やにしん加工に使われた道具や、番屋で暮らした人々の生活用具や服、写真やジオラマなどを展示しています。
ここではぜひ2階にも上がってみてください。2階には広い客間や親方夫婦の寝室のほかに、「隠れ部屋」もあります。隠れ部屋の用途については、現金の隠し場所だったとか所説あるそうですが、はっきりとしたことは分かっていません。
また、2階からは窓ガラス越しに絶景が楽しめるのもおすすめポイントです。
さらに、建物の敷地の奥のほうには小さな祠と岬があり、ここからの眺めも最高です。石狩湾の水平線から祝津漁港まで、ぐるっと広角に見渡すことができるので、お天気が良い時にぜひ訪れてみてください。